プロの道具箱 連載100回記念スペシャル 第1弾
THE BARBER

プロの道具箱 連載100回記念スペシャル 第1弾
THE BARBER  代表  ヒロ・マツダ  (HIRO MATSUDA)

皆様のおかげをもって「プロの道具箱」は連載100回目を迎えました。これまで多くの方のご協力とご登場をいただき、編集部一同、感謝しております。
つきましては、連載100回を記念し今週から数回にわたり特別記念企画を配信して参ります。 尚、この特別記念企画は通常の「プロの道具箱」と並行しての配信になります。ぜひともお見逃しのないようにお願いいたします。

さて、記念スペシャル第一弾のゲストはTHE BARBER 代表 ヒロ・マツダさんです。究極の理容室をかたちにし、日本のみならずニューヨークでもTHE BARBERを展開されている現代の名工、ヒロ・マツダさん。既に多くのメディアで取材され一般の方にも広く知られるお店となりましたが、今回はそういった記事でも紹介されることのなかった同業者ならではのお話もたっぷりと伺いました。

それでは、ヒロ・マツダさんの道具箱をSNAPSHOT !!

TOOL BOX TOUR

自身のこだわりの為ではなく、お客様のこだわりの為に-。

SCISSIRS

鋏は、スタイルを生み出す命のようなもの-
自分の手に合ったもの、そして用途に合ったものを使い分けることが大切です。一丁の鋏で全てをこなす人もいますが、やはり使い分けた方がより良い仕上がりになると思います。

これらはヒカリシザーズのものですが、もう15年くらい使用しています。すべて手に取って、自分に合ったものを選びました。また新しいスタイルがつくりたくなったら、そのための鋏を購入するかも知れません。

(写真左から) 刈り上げ鋏(肉厚で刈り上げに最適)/直鋏専用/THE BARBERオリジナル鋏(広い用途に使えます)/ボブ専用/細い物で質感を取る為の鋏/ドライカット用/ミニ(肉厚でボブなどに使いやすい鋏です)/刈り上げが出来るセニング鋏/細いセニング(カット率10%)/セニング(45%)/ヒロ・マツダ氏考案オリジナルセニング

THE BARBER オリジナルシザー

これは、日本人のように量の多い髪を根元から梳くために考案したオリジナルセニング(ヒカリシザーズ製)です。特徴のある形状ですが、根元までスッと入り、質感がなめらかになり、そして使っている人が腱鞘炎にもなりにくい、そんな鋏です。
20年ほど前につくりましたが、今でも愛用しています。海外でも評判が良かっですし、髪が伸びても自然な感じが保てます。是非みなさんにも使ってみてほしいですね。(※ヒカリシザーズにて現在も購入可能です。)

RAZOR

軽くて使いやすいレザー(共にフェザー製)です。白い方がカット率15%で前髪用です。黒の物は60%で、柔らかい質感を出したい時に使います。

COMB

(写真左から) フェイスブラシ(毛払い)としてメイク用のブラシを使っています。バーバー用は硬いので、メイク用の物が丁度良い柔らかさです。
鼈甲は引き分け用、水牛(白)は引き分けと刈り上げ用、茶は荒刈り用。そして、その隣の2本は刈り上げや細かい所など両サイドを回しながら使います。これらを使い分ければ、他のコームはもう必要ありません。

SHARVING

男性は毎日髭を剃っています。ですから深剃りよりも、心地よく羽根(プルム)で撫でられているかのような剃り心地の方が喜ばれるだろうと、オリジナル技術「プルムシェーブ」によるシェービングメニューを考えました。素肌までをも整える、今までにない剃り心地が提供できます。

THE BARBERのロゴが入ったオリジナルシェービングマグ(日本製)と、シェービングブラシ(イタリア製)。そしてカートリッジタイプの刃が回転するシェービングレザー(フェザー社に開発協力)

AMENITY

私たちがお客様のために使いたいもの、私たちが自身を以てお勧めしたいものを追求していたらオリジナルブランドに行着きました。使い心地からパッケージデザインまで、THE BARBERこだわりがつまっています。

THE BARBERオリジナルコスメ
(写真左から)ザ・プレミアム・シャンプー/ザ・グリース(ナチュラル)/ザ・グリース(エクストラハード)/ザ・モイスチャライザー/ザ・モイスチャーフォーム/ザ・ワックス/ザ・ジェル(エクストラハード)/ザ・プレミアムトリートメント

FACILITY

お客様の多くが、日々のストレスを抱えて来店されます。そんなお客様に少しでもリフレッシュしてお帰りいただけるよう、最大限のおもてなしをしたいと考えています。
それは技術サービスだけで成り立つものではありません。店内のディスプレイや心地よいBGM、そして香り豊かなコーヒーなど、五感に届くサービスも大切な要素の一つです。
お客様にとって、THE BARBERで過ごす時間が特別な時間となるよう、従業員皆で最大限の心配りしています。

新鮮な趣でお客様をお迎えできるよう、レセプション脇のディスプレイは定期的に入れ替えています。

フランスの蚤の市で購入したアンティークなバーバーツールのディスプレイ




この部屋は、テレビ取材でも紹介された渋谷店の地下にあるAVルームです。
プロユースのAV機器を備えた防音仕様の完全個室なので、お客様のお気に入りのDVDなどを持ち込まれて存分に楽しんでいただくことができます。室料は1万円ですが、カットにこの部屋を指定されるお客様も多いです。

INTERVIEW

―多くの男性客に支持されているTHE BARBER ですが、今のお店はどのようにしてつくられたのですか?

THE BARBERは20代後半から50代の男性を対象とする理容室です。しかし自分の理想だけをかたちにして立ち上げたお店ではありません。もしも自分の理想だけでお店をつくったのなら、大切なお客様の要望を無視している事になってしまいます。
美容室に通っている男性がいれば、どのような理容室ならそちらへ通うのかと問うてみました。そうすると「ロンドンのカフェやバーのような高級感のある店」「プライベートが保てる個室感のある店」など様々な声があがってきます。
THE BARBERは、そんな数々の声やマーケティングリサーチの結果を集約してできあがったお客様のための究極の理容室です。

一方で、THE BARBERの料金設定は従業員の満足を第一に考えました。まず従業員が幸せでなければ、人を幸せにするサービスは提供できませんからね。
とは言うものの、従業員の満足が得られる給与を支払うためにはそれ相当の客単価が必要となります。色々と計算した結果、客単価8,000円という価格に至りました。つまり一般的な理容料金の倍近くに相当します。それではどうしたら8,000円もの料金を支払いTHE BARBERに通ってもらえるのでしょうか。

そこでTHE BARBERは、「今の自分たちが出来る技術を売るのではなく、お客様が望まれる技術を提供することでその価値を創り上げよう」 という考えに至りました。これを実現すために相当な時間と努力を要することは承知しています。しかし、これを避けていてはお客様の満足は決して得られません。
例えば、美容室に通われていたお客様は美容の技術を好まれます。であればと私たちは新たに美容技術を身につけました。フェイシャルトリートメントを望まれるお客様のため、私たちは新たなメニューを開発し、その品質を最大限にまで高めました。


・リラックス効果の高いヘッドマッサージで頭皮クレンジングと毛髪のトリートメントをする「シャスパ」
・羽根(プルム)で撫でられているかのような剃り心地で素肌までをも整える「プルムシェーブ」
・本格的な化粧品とマッサージでアンチエイジングとアンチストレスに働きかける「フェイストリートメント」
いずれもお客様の要望をもとに開発したオリジナルメニューであり、目標客単価を達成するための戦略的メニューでもあります。

このように、空間・メニュー・サービス・接遇などお客様が理容室に望まれる理想をひとつひとつ具現化してゆけば、たとえ倍の料金であってもそれを望むお客様には通っていただけます。こうした努力と工夫の積み重ねによって、今のTHE BARBERが在るといっても過言ではありません。

―THE BARBERでは、スタッフ全員がスーツを着用してお仕事をされているとのことですが

カジュアルなファッションも選択肢にはあるかも知れませんが、THE BARBERのお客様は、大半がスーツを着用されたビジネスマンです。中にはアルマーニやグッチのスーツを好むお客様もいらっしゃいます。いくらトレンドであっても、従業員の装いとしてカジュアルな服装が全てのお客様に理解されるかというと難しいかも知れません。やはり、ビジネスマンの方に対しては最も相応しいスーツ姿で応対すると決めました。

如何せん、スーツでの仕事は大変なんですよ。(笑) 何気にやっているとシャンプーでは水が飛ぶし、薬剤で汚れたりもします。ですから、ひとつひとつの動作に細心の注意を払うようになる。それが自然とお客様への気配り、心配りへとつながる。つまりお客様に対して良い仕事ができているという状態になるわけです。これが私の思いです。

-2018年5月にはニューヨーク・マンハッタンにTHE BARBER SOHO NEW YORKをオープンされましたが、その経緯などにつて教えてください。

ニューヨーク出店を考えたのは、銀座ソニービルのリニューアルに伴い、そこにあった店を閉店することになったからです。銀座の上を目指そうと考えたら、まず浮かんだのがニューヨークでした。

THE BARBER SOHO NEW YORKは、お客様の殆どが日本人以外の現地の方です。日本人は全体の2%くらいですね。現地の人にとって日本のカット技術は魅力的に映るようで、日本の店だと判るよう店頭に鎧兜をディスプレイしました。
スタッフは全て日本人です。日本人以外の採用も考えましたが、ニューヨークでは理容師がいない(少ない)んですね。ビューティーサロンばかりで、バーバーは昔からの店しかない。残念ながら、若い世代が目指す夢ある産業に成り得ていないんですね。日本と似ています。
もしニューヨークの次に店を出すならヨーロッパですね。イギリスにTHE BARBER をつくりたいです。

-THE BARBERのこれからについてお聞かせください?

THE BARBER がある程度周知され落ち着いてきたら、また違うタイプの店を作ろうと思っています。
どんなお店かは内緒ですが、既に構想はありますよ。そろそろ準備を始めようかなと思っています。

-それでは最後に、ヒロさんご自身の今後のプランは?

本当はこの仕事は50歳で辞めたかった。(笑)
とは言え、自分を指名してくれるお客様がいなくなるまでやるかな。
あと、健康を考えて卓球教室に行こうかなと思っています。(笑)

 

INFORMATION

THE BARBER SHIBUYA
住所:東京都渋谷区円山町22-15

電話:03-5728-6558

営業時間:平 日 11:00~21:00 (受付終了20:00)
土日祝10:00~20:00 (受付終了19:00)
定休日:なし また店舗により異なります。

WEBSITE http://www.thebarber.jp/

NIHOMBASHI TAKASHIMAYA S.C.
中央区日本橋2-5-1-5F Takashimaya Nihombashi S.C.

DAIKANYAMA
渋谷区代官山17-4 The Residence ビル1F101

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中央区銀座8-10-17 Ginza Southern ビル2F

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千代田区丸の内1-8-1 Marunouchi Trust Tower N ビル 2F

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港区南青山2-27-20-101

HIROO
港区南麻布5-16-10

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渋谷区猿楽町9-8 URBAN PARK Daikanyama I-B1F

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68 Thompson Street New York, NY 10012